鉄路は西から東から

鉄分多めの日常とお出かけの記録

“旅は自由席”――暖冬道東一周旅行(4)

rockmansion.hatenablog.jp

第3回はコチラ↑

 

根室駅→納沙布岬

根室本線の快速「ノサップ」で根室駅へ到着した私。ここからはバスに乗車し、列車名にもなっている日本最東端の地・納沙布岬へ向かいます。

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列車に接続する形で、いい具合に納沙布岬方面行きのバスがあるため、駅前のバス案内所で往復の乗車券を購入。バスもこうやって事前に乗車券を買えると安心ですな。やって来たバスに乗り込みます。

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根室市街の標識には、日本語、英語のほかにロシア語の表記も。そういえば、以前に訪れた稚内でもロシア語が併記されていました。稚内はサハリンとの間にフェリーが運航されている*1ので想像がつきますが、根室もやはりロシアと近いだけあって、つながりは深いのですかね。

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バスは市街地を抜けて郊外へ。なだらかな坂を下る、まっすぐな道が海のほうへ向かって伸びています。道路脇のポールには路肩を示す紅白の矢印が。地元の人には何でもない景色でしょうが、ヨソ者はこういうのを見ただけでも「ああ、自分はいま、北海道にいるんだなあ」と興奮するんですよね……。

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40分少々の乗車で、終点の納沙布岬に到着。他に一人旅らしき観光客2人が下車。日本最東端を観光すべく、おのおの何となく別方向へ歩き出します。帰りのバスまでは50分あまり、こちらもうかうかしていられないので、ここからはペースを上げて読者の皆さんと名所を回りましょう。

 

納沙布岬のモニュメントいろいろ

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まず最初に目についたのが、この巨大な茶色いアーチ。これは「四島のかけ橋」というもので、碑文にいわく歯舞・色丹・国後・択捉の北方四島の返還を願って建てられたものだとか。中央には燭台があり、「祈りの火」と題された炎が、北方領土の返還が実現するその日まで四島に向かって燃え続けているといいます。

……まァ、実際は火災防止のために、併設する資料館の開館時間しか燃えてないんですけどね(笑)。こういうのは気持ちですから。

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続いては北方館。これまでの北方領土返還運動の歴史や、関連する資料などが紹介されています。2階にある展望室には望遠鏡が設置されており、ロシアの沿岸警備艇が航行する様子を覗き見することができ*2、さながらスパイ気分(笑)。

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かわいらしい見た目や口調と裏腹に、Twitterで硬派なクイズを繰り出してネット上のオタクたちのハートをワシ掴みにした、あの北方領土ゆるキャラエリカちゃん」にも会えます。

 

  

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最後に、「納沙布岬」の名前が入った標柱の写真を。あ、そうそう、北海道には「ノシャップ岬」というそっくりな名前の岬がもう一つありますが、そちらは稚内にある全くの別物ですので念のため。

後ろに見えている白い灯台が、最東端に立つ納沙布岬灯台です。水平線の上に見える島影は歯舞群島の島々。そう、あそこはもうロシアなのです。

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政治色のないバージョンも。「本土」というのは、一般人が行ける場所、北方領土を除いた、という意味でしょうな*3

それにしても今日、本当にいい天気すぎません? 雲もほとんどなく、目の前に広がるのは、抜けるように青い空と海のみ。ワタクシ、わりと「晴れ男」だという自負があるんですが、それにしてもバチが当たるんじゃないかと思うほどの快晴であります。

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遠く国後島の白い山脈もご覧の通り*4。望遠鏡に頼らずとも、肉眼ではっきりと見ることができました。

さて、名残惜しいですがそろそろ帰りのバスの時間。納沙布岬バス停から、ここまで連れてきてくれたのと同じバス*5に乗車し、根室駅へ戻ってきました。

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16時11分発の普通列車釧路行きに乗車します。特急「スーパーおおぞら」に乗り継いで、今日中に札幌へ到達できる最終便ですが、お客は少なく、私のほかに2~3人ほど。これが日常なのでしょう。

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日本最東端の駅は隣の東根室駅(無人駅)なので、ここ根室駅は「日本最東端有人の駅」。滝川駅を起点とし、総延長443.8キロにも及ぶ根室本線の果ての果て、その線路の尽きる先へと沈んでいく夕日です。日本で一番早い日没でもあります。

 

宿のある釧路へ。そしてついに「衝撃」

列車は定刻通り根室を発車。次の東根室駅で学生がぞろぞろ乗ってきて、いっとき車内は賑やかになりましたが、駅へ着くたびに一人、また一人と降りていきます。往路にも乗っていた「前面展望おじさん」が、また懲りもせず運転席の後ろに張り付いているのを尻目に、私は来たときと逆側の進行方向左側に陣取り、暮れていく海をぼんやりと眺めます。今度は普通列車なので往路よりも時間がかかり、来た道を戻るだけなので退屈でないこともありません。

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車窓が暗くなっていくのも日本一早いので、そうなると景色も見えず、あとは本を読んだり、スマホをポチポチして今宵の宿の場所や夕飯の目星をつけたりして時間をつぶします。

時折、けたたましい汽笛とともにブレーキがかかります。往路と同じく、エゾシカが線路内に侵入しているのです。駅の周辺以外は人家の明かりも街灯もほとんどなく、まっくらな闇の中をヘッドライトの明かりだけを頼りに走っている状態ですから、直前まで発見するのも難しく、危険度は増しているのでしょう。

そして――列車が厚床駅を発車し、姉別駅へ向かっていたとき、“その瞬間”が訪れました。

 

\ピィピィピィピィピィーーーー!!/

プシューッ ギィーッ……

_人人人人人人人人人人_
> ド ン ッ !! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

ガリガリガリバリバリバリ!!/

ギィィイイイイッ!!

ガクンッッ……(停止)

 

(  ゚д゚)←私

 

とうとう列車がエゾシカと衝突したのです。運転士がマイクで車内放送しましたが、瞬間は見ずともその一部始終を音や衝撃で分かっていたので、ほとんどの乗客は慌てず騒がず。謎にテンションが上がっている(?)のは例の前面展望おじさんだけ。

その後、運転士が無線で指令と連絡を取り、列車を降りて確認しに行きました。私も席を立って最後部から様子をうかがってみましたが、あたり一面闇に閉ざされ、ひいたであろうシカの姿はもちろん、周りに何があるのかさえ分かりません。

やがて、状況確認と列車の点検を終えた運転士が戻ってきて、異常がないことが確認されたため列車は発車。厚岸駅などで数人の客を拾い上げた列車は、8分遅れで終点の釧路駅に到着しました。

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接続を取るために待っていた「スーパーおおぞら8号」へと慌ただしく乗り換えていくお客もちらほら。私は釧路泊なので、のんきに列車の写真を撮ります。車両の前面を見た感じ、シカと衝突した痕跡は分かりませんでした。

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車番はキハ54 514。あとで知りましたが『思い出のマーニー』に登場した車両だったんですね。

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さて、駅からほど近いビジネスホテルにチェックインを済ませ、夕飯を食べに出かけます。時刻はすでに20時近くなっていました。

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……で、詳細は省きますが某居酒屋の店先で不愉快極まりない経験をするなど、紆余曲折があり、最終的には泉屋本店というレストランで「スパカツ」を食べました。スパゲッティの上にトンカツを載せ、その上からミートソースをかけた、釧路市民のソウルフードだとか。夕食難民になって右往左往したあとだったので、ボリューム満点のスパカツが一層おいしく感じられました。

 

 

つづく

 

 

*1:2019年から休航中

*2:ご丁寧に船種の解説もある

*3:ちなみに本当の最東端は南鳥島

*4:黒い影はレンズのゴミです

*5:近くの駐車場で休んでいた