鉄路は西から東から

鉄分多めの日常とお出かけの記録

南越後観光バス「快速 魚沼基幹病院線」乗車記

どうもこんにちは。

今日は珍しくバスのお話です。

私は公共交通機関では鉄道の次にバスが好きです。と言っても車両などは全然詳しくないですし、乗ったことのある路線もごくわずかに限られますが、地元を走る越後交通や頸城自動車にはある程度の関心があります。

地方の路線バスを取り巻く環境は年々厳しさを増しており、それは鉄道の比ではありません。補助金に加え、都市間高速バスやツアーなどの貸切営業の収益によって路線をなんとか維持していた会社も、折からのウイルス禍のせいでそのビジネスモデルが崩れてしまいました。

各地で路線の廃止や縮小が相次ぐ中、南越後観光バスでは新たな路線が誕生しました。それが「快速 十日町車庫前~魚沼基幹病院線」です。

★時刻表はコチラから↓

南越後観光バス http://www.minamiechigo.co.jp/

正確には新規路線ではなく、これまで運行されていた十日町車庫~後山(うしろやま)間のバスを延長する形で、南魚沼市にある「魚沼基幹病院」まで運行しています。

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5月のある晴れた日、「十日町本町6丁目」バス停から乗車。始発は越後交通十日町車庫ですが、最初にバスは街なかをグルグルと巡回するので、時間とお金を節約するため車庫からほど近い本町6丁目バス停まで来ました。

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バスは1日4本だけ。最終便は浦佐駅東口止まりで、いずれも平日のみ運行。土休日やお盆・年末年始は運休です。

……まあ、そもそもバスで街へ出てくるのは通学の学生やお年寄りだけでしょうし、学校はもちろん、お年寄りが行きそうな病院や官公庁、金融機関なんかも平日しかやっていません。同居の家族がいれば土日は仕事が休みで、子供の部活や買い物なんかは車で送迎できるから、これでも困らないんでしょうな。

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13時16分、やって来たのは小型のバス。あとでググったところ、三菱ふそうの「エアロミディME」というバスだそう。寸詰まりの小さい車体ですが、ちゃんと2ドアあり、後乗り前降りになっています。ちなみに小出営業所所属でした。

本町6丁目バス停から乗車したのは、私のほかにおばあさんが1人だけ。この系統の本日3本目、魚沼基幹病院まで向かう便としては「最終」に当たります。どの程度の乗車率かと思ったら……おお、意外と乗っている! 私を含めて9人も乗っていました。

「9人も」と言うと笑われてしまいそうですが、平日の昼下がりに山奥へ向かう、1日たった4本のバスにこれだけ乗っていれば上出来でしょう。ぶっちゃけ4~5人くらいかと思ってたわ。小さいバスで座席数も少ないので、見た目のうえでも9人乗ればそこそこ乗っているように見えます。

……と、出足は好調に思えましたが、乗車したお客は私が最後。あとは1人、また1人と降り、国道117号から山間部へ向かう国道252号に分かれる「中条病院前」で3人降車し、ついに私だけとなってしまいました。

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この付近までは別の系統も併走しているので、私以外の乗客は「魚沼基幹病院行きだから乗った」わけではなく、単に「都合のいい時間に自分の目的地のほうへ向かうバスがあったから乗った」だけなのでした。

身軽になったバスは、252号を快調に走ります。自動放送の声が停留所の名前を1つひとつ律儀に読み上げますが、誰も乗車してくる気配はありません。5月ということもあって、鮮やかな新緑が目にまぶしい。

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とうとう乗車可能な最後の停留所「菅沼」を過ぎ、市境を越えました。次の「後山」から先は浦佐駅東口までノンストップ。「快速」の名はこのためです。延長運行は十日町市の実証実験、つまり十日町市の税金が投入されているため、南魚沼市内のみの利用はできないようになっているんですな。

峠をトンネルで抜けたバスは、一転して下り坂に差し掛かります。スノーシェッドに覆われたグネグネ道を駆け下りて、あっという間に浦佐の街へ。国道17号に合流し、浦佐駅東口を経由。

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帰りは列車を利用するつもりだったので、降りようか少し迷いましたが、ここまで来たら終点まで行くべぇと思い直して定刻14時ちょうど、何にも用事はないのに終点「魚沼基幹病院」へ到着したのでした。十日町本町からの運賃は750円也。

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……さて、趣味の乗車としてはここでおしまいです。「ああ、おもしろかった」で記事を締めくくってもいいのでしょうが、この路線の行く末まで考え始めると心配の種はあります。

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まず、私以外の誰も魚沼基幹病院まで利用しなかったこと。まあ時間が中途半端なので、朝イチの便は診察へ向かう患者がある程度乗っているのかもしれませんが。それを抜きにしても、このバスだけが通る(=中条病院前より先の)集落の人も誰も利用していませんでした。

また、このあと浦佐駅へ歩いて戻ったのですが、ちょうど私が駅へ着くころに魚沼基幹病院始発の十日町車庫行きがやってきました。しかし乗客はゼロ。浦佐駅東口からの乗客もゼロ。空気だけを乗せたバスが走り去って行きました。この日は病院へ向かう人だけでなく、病院帰りの人もいなかったんですね……。

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十日町から列車で魚沼基幹病院へ向かおうとすると、六日町で跨線橋を渡っての乗り換えが発生します。しかも最寄駅の浦佐まで来ても、結局そこからバスかタクシーに乗らないと少々遠い場所にあります。

その点、バスは十日町市の市街地から乗り換えなしで浦佐駅や魚沼基幹病院へ行くことができ、また浦佐駅から新幹線に乗れば、十日町から新潟まで1時間40分程度で行ける、と十日町市の資料はアピールしています。本数も少なくマイナーですが、この所要時間は現在のところ、十日町~新潟間を公共交通機関で移動する場合の最速ルートの1つです。

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魚沼地域最大の医療拠点までダイレクトに至れる手段としてだけではなく、都市間移動の一翼を担う可能性も秘めた「快速 魚沼基幹病院線」。まだまだ路線の存在自体が市民に認知されていない、周知不足の感は否めません。ぜひとも一度限りの実験で終わらず、利用が定着していくといいなと思います。

www.minamiechigo.co.jp