鉄路は西から東から

鉄分多めの日常とお出かけの記録

帰ってきた只見線

どうもこんにちは。

2022年10月1日(土)、豪雨災害で不通となっていたJR只見線が全線で運転を再開しました。初日は車両トラブルに見舞われ、祝賀ムードに水を差す残念な一幕もあったようですが、実に11年という長い年月を乗り越えてこの日を迎えられた関係者の皆様の尽力に敬意を表します。

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只見線は、福島県会津若松駅新潟県小出駅を結ぶ、全長約135キロの非電化ローカル線です。

2011年7月の「新潟・福島豪雨」では鉄橋の流失など甚大な被害を受け、このまま廃止になるのでは、と噂されました。というのもこの只見線JR東日本の中でも、いや日本全国のローカル線を見渡してみても指折りの「秘境路線」なのです。某3セク鉄道の社長はこれを「横綱」と呼んだそうですが、なるほど、もっとも本数の少ない区間では1日3往復しか列車がありませんでした。

本名駅の発車時刻表。2008年5月撮影

当然ながら赤字額も莫大。これは単に利用客が少ないだけではなく、豪雪地帯を走ることから、除雪費がかさむことも要因でしょう。何しろ、並行する国道があまりの雪の多さに冬季通行止めになるほどです。近年は大雪になるともはや除雪をあきらめて(?)、何日間も終日運休となることも珍しくありません。

雪に埋もれる只見駅。この日は珍しく快晴だった。2017年2月

利用者の減少、毎年の降雪、そしてやってきた未曾有の大水害。自然災害からの復旧を断念し、そのまま廃止に追い込まれた路線は過去にいくつも存在しました。とうとう只見線にも引導が渡されるときが来たかと、覚悟した人も多かったでしょう。正直、私もその一人でした。

しかし、福島県は、沿線の市町村は、そして只見線愛する人々はそう思いませんでした。

只見駅から草ぼうぼうの不通区間を臨む。2015年10月

前述の通り、只見線は「超」がつくほどのローカル線です。昨今のコロナ禍で、ようやく日本各地のローカル線の存廃が取り沙汰されるようになりましたが、そんな議論のはるか前から只見線は誰の目にも「超」赤字だったのです。

それでも、福島県と沿線市町村は復旧を願いました。最後まで不通だった会津川口只見駅間の復旧に必要となる膨大な費用と、その後の維持管理費の負担を表明。バス転換を提案していたJR東日本もこれに折れる形となり、福島県が線路や施設を保有し、JR東日本が車両を運行する「上下分離方式」によって、全線開通のめどが立ちました。

運行期間11年に及んだ只見線代行バス。2015年10月

おそらく、この結論に至るまでにもさまざまな人の努力や苦労があり、紆余曲折を経て2022年10月1日を迎えることができたのだと思います。実際に議論や交渉に当たった人、復旧工事に携わった人、自分ができる範囲で只見線のPRや支援をおこなった人……。私は当事者ではないので、このあたりの事情をこれ以上想像で記すことは避けます。

役場に掲げられた横断幕。思いはつながった。2015年10月

では、「外野がこれからできることは何だろうか?」と考えてみたら、やはり結論は1つだけ。そう、「只見線に乗ること」です。

「よっしゃ、『青春18きっぷ』のシーズンになったらさっそく乗りに行くぜ!」という人……まあ、べつに非合法な手段ではないので全然否定はしませんけれど、私は普通乗車券で乗りたいと思います。できれば始発から終点まで乗りっぱなしということはせず、途中下車して、観光したり食事をしたりお土産を買ったりしたいですね。一人ひとりの額は小さくとも、そうして沿線でお金を使って経済を回すことが、超赤字ローカル線の復旧に携わった方々の「覚悟」に報いることになるはずです。

18きっぷで乗ろうと考えている人にも、かつての18きっぱー*1の一人として、「沿線にお金を落とすこと」はぜひお願いしたい。あなたが持っているのは、一度きりの片道きっぷじゃない。何度でも途中下車や後戻りができる魔法のきっぷですよ。

只見で買ったお菓子を食べながら。2020年12月

もっとも、最少で1日3往復しかない路線ではなかなか厳しいとは思います。でも、いっぺんにあっちもこっちも回る必要はありません。なぜなら今、只見線は全線開通したから。何度でも乗りに行けばいいのです。今日も明日も明後日も、人々の日常と非日常を乗せて、会津若松と小出の間を列車は走ります。

大白川駅ですれ違う会津若松/小出行きの列車。2008年5月

もし再び災害で止まる日が来ても、只見線を必要とする人々、応援する人々がいる限り、「横綱」は何度でも立ち上がることでしょう。

おかえり、只見線

 

 

*1:青春18きっぷで旅をする人