鉄路は西から東から

鉄分多めの日常とお出かけの記録

続・『かげきしょうじょ!!』が本当の「かげき」になった日

どうもこんにちは。

昨年の秋、私の大好きな作品『かげきしょうじょ!!』が舞台化されました。当時、2.5次元の舞台観劇は初めてであり、不安と期待の入り混じる気持ちで劇場へ向かいましたが、あまりの素晴らしさに大感激でした*1

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あれから1年。

『かげきしょうじょ!!』の舞台が続編をやるらしいゾ。

この情報を聞きつけ、さっそくチケットを手配。前回は初日だったので、今回は最終日へ行ってみようと思って千穐楽を予約しました。

ただ……。続編と言いつつ、演者が前回と替わっている役もあり、脚本や演出などの主要なスタッフも別人に。いったいどんな舞台に仕上がったのか、今回も期待と不安の入り混じる中、千穐楽の日を迎えました。

 

2024年12月18日(水)

暮れも押し迫った平日。前日に立川で1泊し、都心へとやってきました。前回の会場は新宿のスペース・ゼロでしたが、今回は日本橋三越劇場です。

すげえ。言わずと知れた、超一流の老舗百貨店。私のような田舎暮らしの平民がそうそう用事のある店ではなく、初めて訪れました。

とはいえ大富豪だってユニクロを着る時代。身なりだけで差別されるようなことはありませんから、綽々たる紳士の余裕を漂わせながら会場入りしたかったのですが、時間配分をミスって、着いたのは公演開始10分前。

おまけにその劇場とやらが三越内のどこにあるのか分かりません。らちもない風体の三十路男が、真冬だというのに額に汗を浮かべて、高級ブランド品に囲まれた店内をセカセカと歩き回った挙句、入口の尾根遺産*2に「アッ、アノ……三越劇場ってドコっスカ???」と尋ねる始末。しかし、似たような輩を今日だけで何人も案内したことでしょう、尾根遺産は楚々とした声と曇りのない笑顔で「あちらのエレベーターで6階へお上がりください」と教えてくださいました。

上品そうなおじいさんおばあさんに交じってエレベーターに乗り、1つウン十万円の茶碗や絵画には目もくれず、ようやく劇場入口にたどり着いたのは開演5分前。ロビーの様子を見物する暇もなく、劇場スタッフが口々に着席を促すかまびすしい声に急き立てられながら、自席にたどり着いて腰を下ろした途端に照明が暗転しました。

 

natalie.mu

さて、今回の感想を書き記すにあたって、非常に気が重い。

一言でまとめると「悪くはなかった」。……なんとも微妙な感想ですが、いや本当、悪くはなかったんですよ。しかし前回はもう興奮冷めやらぬという感じで、気の向くまま筆*3の進むまま書きつづったのに比べると、今回はもう観劇の途中から「これ、どうやって記事にしようか……」と考えてしまいました。

続編の宿命として、どうしても前回と比べられてしまう部分が大きいと思います。実際に私もそのつもりで観劇し、そのつもりで今回の記事を書いています。本当はもっと寛大な心で鑑賞することを心掛けるべきなんでしょうが……。

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前回は、『かげきしょうじょ!!』という作品をとにかく忠実に再現したものでした。レシピ通りの分量で、素材の味を生かした調理法で、もちろん美しさにも気を配った完璧な和食のような料理。その見た目が期待通りで、味は期待以上だったからこそ、「なんちゅうもんを食わせてくれたんや……!」と感動を覚えたのです。

翻って今回。すごかったねえ。非常にコミカルな作風で、観客席からは幾度となく爆笑が巻き起こる舞台でした。もちろん私もその一人。そういう意味では楽しませてもらいました。さっきの和食に例えるなら、創作寿司とでも言いましょうか。それも、かっぱ寿司とかスシローみたいな、ファミレス化したカジュアルな寿司屋の創作寿司。サーモンにアボカドを載せてマヨネーズをかけてみたり、えびにチーズを載せて炙ってみたり、ハンバーグやフライドポテトが流れて来たり。

むろん、回らない寿司屋の大将が目の前で握る寿司が正しくて、ベルトコンベアで運ばれてくるチェーン店の寿司はまがい物だ、などと言うつもりは毛頭ありません。私もチェーンの寿司屋ばかり行ってますし。

ただ、大部分は前回と同じネタ(役者)を使って、同じ寿司屋の看板で客を集めて、出てきたのがカリフォルニアロールだの炙りチーズえびだのだったので少々困惑した、というのが本音のところです。おいしかったけどさ。

……あんまり遠回しでチクチク言うのも悪いので、ここからは前回同様、キラリと光る役者さんの演技を見ていきましょうか(笑)。

1.渡辺さらさ
2.奈良田愛

主役の2人。ただし、渡辺さらさ役の志田音々さんは続投だったのに、奈良田愛役はまさかの交代。Wヒロインの片割れ、しかも物語の狂言回し的ポジションを替えちゃって大丈夫なんすか。今回の一番の懸念要素がここでした。

志田音々さんは安定のさらさっぷり。さらさマジさらさ。前回はほぼ紅華の制服かジャージ姿でしたが、今回は原作に近いワンピース姿も見られて眼福。この人がいてくれてよかった。舞台かげきの至宝ですよ。

一方、奈良田愛(奈良っち)を演じたのは小越春花さん。キーッ! 誰よその女! え、NGT? うーん、アイドルねぇ……。あっ、新潟出身なの? そっか同郷か……よく見たら結構かわいいし……じゃあオジサン、応援しちゃおっかな(^^)……ナンチッテ。

弱冠20歳で、舞台もこれが初めてらしいのですが、実に生き生きとしたものでした。若手アイドルが主演と聞くと、どうもキャストありきの実写化で大根芝居ばかり見せられてきたせいか、色眼鏡をかけてしまっていた自分を反省。

ていうか、よく考えたら立場上は「本物の奈良っち」に近いんですよね。かつて奈良田愛が所属していたグループは「JPX48」といって、名前の通りAKB48のような多人数アイドルグループをモデルにしたもの。だから、その一員である小越さんが奈良っちを演じるのは何の不思議もないと言えるでしょうし、きっとご本人の経験が芝居に投影されている部分もあるはずです。仏頂面で「ごめんねLOVE」を歌っている姿はシュールで、奈良っちが実在したらこんな感じかとニヤニヤしてしまいました。

youtu.be

3.小園桃

奈良田愛が所属していたJPX48でセンターを務めていたのが、この小園桃。演じたのは逢田梨香子さん。アニメ版『かげきしょうじょ!!』でも小園桃役だったので、前回の佐々木李子さんと同様、「中の人が本人役」のパターンです。前述した「ごめんねLOVE」での生歌披露もありました。かわいいお声でした。

それにしても、「ごめんねLOVE」は今回初めてちゃんと聴きましたが、こんなゴリゴリのアイドルソングだったとは*4。普段こういう曲はあまり聴かないんですが、大いに盛り上がった劇場の雰囲気も相まって、いいもんでしたね。帰りの新幹線の車内でダウンロード購入しちまいましたよ。

4野島聖

腹黒ネキ。しかし今回はその腹黒い言動よりも、彼女の過去に焦点が当てられていました。このパートはチョケた雰囲気も鳴りを潜め、おおむね原作通りだったのではないでしょうか。本当にねえ、聖だって最初からああいう唯我独尊だったわけでも、人生が順風満帆だったわけでもないんだよなぁ。

演じたのは前回と同じ青山なぎささん。見た目からしてあまりに聖そのもので、同窓のよしみもあって勝手に親近感が湧き、彼女のラジオをときどき聴く程度のマイルドなファンを昨年以来続けています。

過去の聖がJPX48のライブに行くシーンでは、客席通路に設けられた小さな台の上に立ち、舞台のほうを見ながらノリノリだった姿がほほえましく。そして曲が終わって観客が拍手したときに、「ね、めっちゃよかったよねー!」みたいな満面の笑みでこちらを振り返ったのがすごくかわいかったです。また一段とファンになってしまった😊

5.千穐楽さみしろう(18日のみ)&渡辺健

なんだこのジイさん!?(驚愕)

……いやァ、たまげましたね。まず「千穐楽さみしろう」って誰やねんという話ですが、これは中川晴樹さん演じる紅華歌劇団の大道具さんです。原作にそんな奴いたっけ? いません*5

急に客席の後ろから出てきて観客の注目を一気に浴びたところで、「どうも、千穐楽さみしろうです」などとのたまう。その瞬間に客席がドッと笑いの渦に包まれました。どうやらこのジイさん、日によって名前が違ったらしく、それを知っていたリピーター客が「今日はこんな名前で来たかwww」と笑い、つられて私のような初見の客も一緒に笑ってしまったわけです。

一応、さらさの祖父である渡辺健が本当の役なんですが、奈良っちとのやり取りでも大チョケ。もはや普通にコント、お笑いライブを観に来たかのようです。もちろん原作ではそんなファンキーなジイさんではないので、文字で書くと改悪も甚だしいと思われそうですが……もうね、おもしろかったからどうでもいいです。原作者の斉木久美子先生もOK出したそうですし。

そういう点で言うと、大木先生も突然歌って踊りだす謎のキャラにされていましたね。どういうことなのか。それにしても踊りがキレッキレだな、歌う声もイケボだし、立ち居振る舞いが颯爽としていてさすが紅華歌劇団OG……と思ったら、演じた初風緑さんは元宝塚歌劇団で男役を務めた方なんだとか。ほ、本物のOGやんけ!

 

……と、ここに挙げた以外にも、役者さんの演技は誰もかれも素晴らしかったです。全12公演の千穐楽ということでリピーターも多くいたようで、初日を観に行った前回と比べると、観客側の熱というか「温まり方」も違っていました。笑えるシーンでは弾けるように瞬時に笑いが起こり、ライブのシーンではすぐさま手拍子が始まる。このリピーターとの温度差も初めはやや戸惑いました。なるほど、千穐楽だとこういうことになるんだな。

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あとは……三越劇場というハコについて。前回より小さくなりましたが、そのぶん客席と演者の距離が近いように感じられました。何より、きらびやかな装飾が随所に施された豪奢な劇場は、さながら宝塚のようで作品の雰囲気にマッチしていました。しかし客層にはマッチしていなかった(笑)。同じような感想を持った方を見つけたので、引用させていただきます。

それから、劇場前のロビーといいますか物販コーナーもかなり手狭でした。それゆえか劇場スタッフが声を張り上げて客をコントロールしようとする姿勢が強くて、終わったんならさっさと散れと言わんばかり。余韻に浸りながら公演グッズをゆっくり物色したりとか、一緒に行った誰かと感想を語り合ったりとか、そんな空気ではなかったのは少し残念ですね。この点は、前回の新宿スペース・ゼロのほうが広々していて断然よかったです。私は特典付きチケットだったこともあって、結局何も買わずに帰ってきました。

特典:紅華音楽学校生徒手帳風パスケース

書きたいことはまだまだありますが、これ以上続けても重箱の隅をつつくような記事になるだけなのでやめておきましょう。とにかく第3章を頼みましたよ。これで終わりじゃ不完全燃焼すぎますから。

次は銀座久兵衛と言わないまでも、すしざんまいくらいの感じでお願いします(笑)。

 

 

*1:観劇だけに(笑)

*2:死語

*3:筆と書いてキーボードと読む

*4:というか、そのつもりで制作されたんだろうから当然ではある

*5:名前のないモブ役という意味では出てくる。もちろん濃密なやり取りをするキャラではない