鉄路は西から東から

鉄分多めの日常とお出かけの記録

グッバイ奥只見ターミナル、フォーエバー奥只見ターミナル

どうもこんにちは。

先日、ネットで新潟県内のニュースを何気なく眺めていたら、驚きのニュースが飛び込んできました。

www.uxtv.jp

県内の人気スポット魚沼市の奥只見湖の近くにある老舗土産物店が11月5日、半世紀にわたる営業を終え閉店しました。紅葉がピークをすぎ秋が終わりに近づく中で迎えた閉店の日は、感謝の一日となりました。

晩秋の奥只見。けんちん汁が自慢の食堂や土産物をそろえた奥只見ターミナル。11月5日が最後の営業となりました。

 

――UX新潟テレビ21 | 晩秋の奥只見 52年愛された老舗土産物店が閉店【新潟・魚沼市】より

youtu.be

「奥只見ターミナル」とは何ぞや、というのは上のニュース記事なり動画なりをご覧ください。このニュースを聞いて、私もおととし7月に奥只見ダムへ行ったときのことを思い出しました。

その様子はまだブログ記事にしていませんでしたので、今回の閉店を機に書いてみます。奥只見ターミナルに、感謝とねぎらいの気持ちを込めて。

 

2021年7月5日(月)

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7月とはいえ、まだ梅雨まっただ中。朝から降っている雨にも負けず、スヰスポちゃんを駆ってやって来ました奥只見ダム。私は4歳だか5歳だかのころに親に連れられて来たことがあるので、実に二十数年ぶりの再訪です。今度は自分で自分のクルマを運転して来るとは、感慨深いなぁ。

JR只見線の名前の由来となった「只見」は福島県の地名ですが、「奥只見」は新潟県魚沼市の山奥にあります。地図を見ればお分かりの通りまるで別の場所で、只見町からは行けませんので念のため。

この奥只見、メインとなる施設は「ダム」とそれが造り出した「湖」です。そこへ至るまでの道がまた大変おもしろく、その名も「奥只見シルバーライン」と言います。

みんな大好きトンネル内分岐(帰路に撮影)

(後続車がいないときに完全に停車して撮影。同上)

元は奥只見ダムの資材運搬用に作られた道路を、完成後に観光道路として開放したもので、穿つトンネル19本、全長22kmのうち実に18kmがトンネルです。あまりの長さに、トンネルの途中に丁字路交差点が設けられているのも特徴です。

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奥只見ターミナルとスヰスポちゃんのツーショット。赤い大きな三角屋根は、堂々としたたくましさと頼もしさを感じます。「山はいつでも旬です」というのもいいキャッチフレーズですね。

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……とはいえ。コロナ禍の続く2021年にあって、新緑も終わり、夏山のシーズンと呼ぶにも早い梅雨時、しかも月曜日というのは旬の「隙間」であることは疑いようもなく。あとで遊歩道の上から撮った駐車場の全景はこんな感じでした。

とりあえず腹ごしらえをしようと、同行の友人と奥只見ターミナルの中へ。あ、申し遅れましたが今回は友人と2人でのドライブです。

私は「いわな焼定食」を注文。看板メニューの「わっぱめし」にも心惹かれましたが、イワナが食べたかったので……。イワナの塩焼きのほか、けんちん汁と、田舎料理の小鉢三種、香の物がついてきて山の幸を満喫できました。

余談ですが、やはり他にお客は皆無だったと見え、ご主人が「よかった~! 今日お客さんゼロかと思った~!」と嬉しそうにおっしゃっていたのが印象に残っています。お話し好きな気さくなご主人で、大雨が降って大変だったときのことなどいろいろと教えてくださり、楽しい時間を過ごしました。

食事を済ませたら、まずはダムへ向かいます。遊歩道を登っていくか、それとも「スロープカー」*1という小型のモノレールに乗っていくか選べます。相変わらず小雨が降っているので、友人と合議の結果、満場一致でスロープカーに乗車しました。幼少期にも乗りましたが、そのときとは異なる新しい車両です。

奥只見ダム

堤高は157m、堤頂長(横幅)は480mに及ぶ

奥只見ダムは銘板にいわく、昭和36年12月竣工との由。時はまさに高度経済成長期です。半年間は雪に閉ざされるこの深山幽谷に、これほど巨大な構造物を造り上げた、当時の人々の技術と情熱――それは敗戦を経て、絶対に豊かな国になってみせるという執念と言ってもいいでしょう――に脱帽です。

写真は撮り忘れてしまいましたが、近くに「奥只見電力館」という施設*2があり、そこで奥只見ダムのイロハや壮絶な建設史を学ぶことができます。

奥只見湖

ダムが造り出した人造湖、奥只見湖。遊覧船に乗って周遊したり、登山道のある対岸の船着き場へ移動したりすることもできます。まァ、天気もよくないし、他にお客もいない中、野郎2人だけで遊覧船に乗ってみても始まらないから、今回はよしましょう(笑)。

ダムの周囲をウロウロしているうちに雨が止んだので、復路は遊歩道を歩いてきて、奥只見ターミナルの隣にあるもう一軒のお土産屋さん、「奥只見レイクハウス」へ。奥只見ターミナルのご主人が「お客さんゼロかと思った」とおっしゃっていたのが気になり、こっちの店でも何か買ってあげようと「山ぶどうソフトクリーム」を注文。爽やかな甘みのあるさっぱりとしたお味でした。

ちなみにこの奥只見ダム、マイカーが無くとも浦佐駅から急行バスでも来られます。長大トンネルの連続するシルバーラインを激走する路線バスというのも一興で、ちょっと乗ってみたいと思いました。

 

  *  *  *  

 

観光地としての2023年シーズンの営業は、奥只見丸山スキー場のオープンを残して、すでに大部分が終わりました。1月になると唯一の道路であるシルバーラインも冬眠に入るので、「旬」はまた来春ということになります*3。そのときには建物も取り壊されるそうで、赤い三角屋根が奥只見の遅い春を見ることはもう二度とありません。しかし、これからも人々の思い出の中にはいつまでも在り続けることでしょう。

最後に、奥只見ターミナルのご主人・上重哲社長の言葉を引用して、記事を終わりたいと思います。

「建物がなくなっても、奥只見はいいところで残ると思いますから。うちがあったなんて思いをはせながら、奥只見に通ってください。絶対に自然は裏切らないからいいところですから、必ずまた奥只見に来てください。」

 

*1:片道100円

*2:入場無料

*3:雪が多すぎて(!)スキー場も春まで一旦休業する