どうもこんにちは。
2021年3月13日のダイヤ改正に合わせて、えちごトキめき鉄道(通称トキ鉄)日本海ひすいラインに開業した新駅「えちご押上ひすい海岸駅」を訪問してきましたので、今回はそのレポートです。
訪問日:2021年3月17日(水)
駅の所在地は新潟県糸魚川市。日本海ひすいラインの梶屋敷駅と糸魚川駅の間にあります。間にありますと言っても、極端に糸魚川駅寄りに位置しており、上り(泊方面)ホームの先端からは、糸魚川駅の場内信号機がすぐ目の前に見えます。列車だとわずか2分ほどで着きます。
無人駅で、ホームはたったの2両分。現在、日本海ひすいラインの直江津~糸魚川間は1両または2両編成の列車しか走っていないので、これで充分なのでしょう。
ただし、屋根は1両分しかありません。そのため、1両ならば屋根に合わせて停車しますが、2両編成の列車が来ると屋根がないところに乗降口が来てしまい、たとえ天気が悪くとも屋根がないところから乗降しなければなりません*1。
これについては、上りホームは糸魚川駅寄りに、下りホームは梶屋敷駅寄りに屋根を付ければ、1両でも2両でも屋根があり、かつ乗降する場所も同じになって分かりやすかったのですが。ここがセンスがないなぁと思うガッカリポイントの1つ目。
ホームは上り(泊方面)・下り(直江津方面)でそれぞれ分かれており、踏切を挟んで千鳥配置となっています。ただし、待合室やトイレなどは上りホーム側にしかありません。
今どきの駅ということで、待合室は冷暖房完備。出入口はガラス張りで見通しも良好です。 時刻表や運賃表はもちろん、ベンチが6人分と、利用者が近隣の駅に問い合わせをする際の連絡電話(インターホンのようなもの)も設置されています。
ただし、券売機はありません。後ろのドアから乗車したら整理券を取り、下車駅にて現金精算する形となります。
外から見るとこんな感じ。もともとこのあたりは漁師町だったそうで、船小屋を意識したデザインとのこと。当然ながらスロープがあり、車いすやベビーカー、手押し車を押して利用するお年寄りの乗降にも配慮されています。
駅舎には地元の木材が使われ、まだ新しいこともあって木のいい香りがしました。
ちなみに「ださい」「長い」と一部で不評のこの駅名。これは駅名を公募した際に最も多かった「押上」*2と、次点の「ヒスイ海岸」*3、そこに社名の一部である「えちご」をくっつけたものだそうです。
どうも欲張りすぎ(個人的には社名の「えちご」は不要)だと思うのですが、地元への忖度と、新駅開業というビッグイベントを利用してとにかく目立たせたかった関係者の思惑が垣間見えます。
まァ、日本一大きい某鉄道会社なんて、公募で上位だった候補を押しのけてなんちゃらゲートウェイという横文字駅名にしたくらいですし、日本にはもっと長い駅名もありますから、目くじらを立てるほどのことでもないでしょう。利用者はおのおの略して呼ぶだろうし。
トイレは待合室とは別の建物になっています。当然こちらもまだ新しくてキレイ。
また、上りホーム側には駐輪場(140台程度)と駐車場(14台)、それにバスの停留所があります。
今のところ駐車場にも余裕があるため、駅から遠い人の「パークアンドライド」もバッチリ。バス停は市内巡回バスだけが停車するようですが、本数は極めて少なく、列車と接続しているわけでもなさそうなので、とりあえず作りました感が半端ない。
まァ、バス会社にとっちゃ商売敵だもんねぇ。駅からバスに乗り換える場合は、すぐ近くにある別のバス停(南押上、または押上一丁目)を利用したほうがいいでしょう。
続いて、踏切を渡って下り(直江津方面)ホームへ向かってみます。
下りホームは上りに比べると極めて簡素で、ただホームがあるのみ。特筆すべきものは何もありません。それどころか、上り側の駅舎にはトキ鉄のロゴとカラフルな駅名が掲げられていましたが、こちらには外から見てそれと分かるような、駅名を示す看板の類は一切ありません。
どうせ地元の人の利用が主だから、という理由で省いたのかもしれませんが、だとしたら駅名に「ひすい海岸」をつけてアピールするセンスと矛盾しているような気も。ここがガッカリポイント2つ目。
何もない、何もないと書いた下りホーム側ですが、駅前にはまだ土地があります。どうするんでしょうね。ここも駐車場やロータリーの一部にするなら開業に間に合わせるはずですし、今後何か公共施設を建てるのか、はたまた分譲して家やマンションでも建てるのか……。
ここからは、駅を離れて周辺の様子を簡単にお伝えします。
駅の周辺は住宅地が広がり、少し歩くとすぐ海に出ます。線路から海側には、駅名の一部にもなっている「ヒスイ海岸」とコンビニ。山側には、糸魚川地域振興局などの官公庁のほか、スーパーやドラッグストアなどの小売店もあります。県立糸魚川高校や糸魚川総合病院も徒歩圏内とされていますが、そこまで近くはない印象。
さて、この場所はJR西日本時代、さらには国鉄時代から地元の方々による駅設置の陳情が行われてきたのですが、実はここから梶屋敷駅寄りの場所に「デッドセクション」*4があります。デッドセクションは緩衝のため架線に電気が流れておらず、電車が走れない(加速できない)ため、そんなところに駅を造るのは物理的に不可能であるとして、長年見送られてきました。
ところが、6年前にこの区間がトキ鉄に転換された際、電車ではなく気動車(ディーゼルカー)が導入されたため、デッドセクションに関係なく走れるようになりました。そのため駅設置の機運が再び高まり、とうとう新駅開業へと漕ぎつけたのです。
JR時代は最低でも3両編成だった電車が1・2両の気動車になったことから、トキ鉄開業当初は沿線住民の不評も買ったようですが、おかげでこうして新駅開業に至ったことは怪我の功名とも言えましょう。
ちなみに、何やら再びデッドセクションを越える「電車」が走るようですが、それはまた別の話。
「駅名がキラキラしている」と槍玉に挙げられるえちご押上ひすい海岸駅ですが、決して話題性だけの看板倒れではなく、ここは半世紀近く前からの住民の悲願がついに結実し開業した駅なのです。
これからますます便利な足として、そして地域振興の一助として、地元の皆さんに愛される駅になることを願ってやみません。