どうもこんにちは。今年もダイヤ改正の概要が発表されましたね。
新潟県内の鉄道事業者3社のプレスリリースの中から、私が気になったものだけ抜粋して行こうと思います。
JR東日本新潟支社
公式プレス:
https://www.jreast.co.jp/press/2022/niigata/20221216_ni01.pdf
現在、240km/hで運転している上越新幹線 新潟~大宮間の最高速度が275km/hに向上。これにより最大7分の所要時間短縮となり、ついでに北陸新幹線も2分程度短縮になるとか。6月に発表されたプレスリリースで予告されていたことです。
なあんだ、たかが数分かよと思われるかもしれませんが、東京駅におけるJR東日本の新幹線の折り返しは大変目まぐるしく、最短12分で降車(2分)・清掃(7分)・乗車(3分)をこなしていきます。東京駅では、2分あれば到着列車からの乗客の降車時間を捻出でき、7分あれば1編成の清掃を完了させられるのです。
つまり、たとえ数分であっても、分刻み、いや秒刻みで1日に何十本も走る新幹線がすべて数分ずつ短縮できれば、全体としての効果は大きいということです。その分、列車を増発したり、あるいはダイヤが乱れたときに回復できる余地が増え、輸送の安定にもつながります。
ちなみに「最高速度275km/h」と聞くと、200系新幹線でも昔やってたじゃん、と思い出す方もいるでしょう。あれは上毛高原~浦佐間の下り線のみにおいて、それも特別に改造を施した編成限定で、トンネル内の勾配を活かしてできる「チート」みたいなものでした。
その後、E2系導入で終了したチート運転でしたが、こんどのダイヤ改正では車両がE7系に統一されるため、チートではなく新潟~大宮間の全区間で全列車が行えるようになります。
今年で開業から40周年を迎えた上越新幹線。北陸新幹線金沢開業後は利用者数で水をあけられ、飛行機のような強力なライバルも不在*1なことから、多額の費用をかけてまでスピードアップに努める必要性はない、と判断されてもおかしくないところです。それでもなお高速・安定輸送を追求するJR東日本の姿勢は評価されるべきでしょう。
他、在来線に関しては意外や意外、終電繰り上げや接続改善のみに留まりました。昨年同様にガッツリと削ってくるかと思いましたがねぇ。
北越急行
公式プレス:
https://hokuhoku.co.jp/press/20221216.pdf
■平日ダイヤ、土休日ダイヤの設定
■列車種別の見直し、列車の統合
■その他
マイナス要素の少なかったJRと引き換え、とんでもない大ナタを振るってきたのが北越急行です。
■平日ダイヤ、土休日ダイヤの設定
御多分に漏れず、利用者の多くは通学の高校生が占める北越急行ほくほく線。当然、平日と土日ではその需要に差があり、これまでは両数の変更で調節してきましたが、いよいよダイヤを分けてきました。
と言っても、現時点で平日(月~木)と金・土休日とでJR線への乗り入れ本数が異なっているため、すでにダイヤが分かれているようなものでした。
ハッキリと平日だけの運転になったのは、822M(六日町6:08発→直江津7:25着)と825M(直江津7:31発→六日町8:42着)の1往復のみ。土休日はよっぽどお客が少なかったんですかね。
おそらく様子見もあって1往復のみにしたんでしょうが、2024年3月以降はどうなるか分かりません。かつて存在した「まつだい行き」「虫川大杉行き」みたいな区間列車が復活するかもしれません。
それから「※着席チャンスを増やすため、越後湯沢駅始発となる上越新幹線「たにがわ」への接続を 3 本から 5 本(土休日 4 本)に増やします。」とあるのは地味に嬉しいポイント。ワタクシ、上越新幹線に乗るときは、わざわざ越後湯沢始発の「たにがわ」ばかり選んで乗っていますので。
■列車種別の見直し、列車の統合
そんなことより、各方面のオタクに衝撃が走ったのがこのニュース。「・全列車各駅停車とし、ほくほく線内の各駅にすべての列車が停車します。」とのこと。すなわち、「超快速スノーラビット」と快速列車の廃止です。
今年3月のダイヤ改正で、下り(直江津方面)1本のみに減らされ風前の灯火だった「超快速スノーラビット」。特急「はくたか」の跡を継ぎ、北陸新幹線相手に孤軍奮闘していましたが、とうとうその火が消えるときがやって来てしまいました。それが北陸新幹線ではなく、新型ウイルスのせいになるとは、コロナ禍前には予想だにしませんでしたが。
越後湯沢~十日町間は曜日を問わず利用者が多く、十日町~直江津間も土休日はそれなりに乗っている印象でした。しかし、やはり平日は厳しかったのではないでしょうか。というか、もともとは平日に首都圏から上越地区へ向かう用務客をターゲットにしていたようですが、それらもコロナ禍で激減してしまいました。
北越急行のプレスには明記されていませんが、「超快速」廃止と同時にえちごトキめき鉄道妙高はねうまラインへの直通運転(直江津~新井間)もなくなるようです。この直通運転も、当初は十日町から北陸方面*2への利用を見越してのものでした。六日町、十日町停車の特急「はくたか4号」の時刻をなぞる形で設定されていたのもそのためです。
■その他
「・ほくほく線内を最高速度 95km/h で走行できるよう駅間の運転時分を見直します。」と、重大な変更点をサラッと書いているその他欄。1997年の開業以来、普通・快速列車の最高速度は110km/hでしたが、これを95km/hに引き下げるようです。やはり保守費用がバカになりませんか。看板列車もなくなるし、そこまでスピードを出して走る必要もないんでしょう。
かつて日本最速の特急が走り、特急亡き後も日本最速の「超快速」が走っていた北越急行ほくほく線。もはや「短絡線」としての使命は遠くなりにけりであります。
ただ、地元に住んで日常的に利用している人間からすると、「ローカル輸送に徹する」ことは必ずしもデメリットではありません。今まで通過していた駅の利用者にとっては便利になりますので*3。始発の3821M、私が高校生だった10年以上前から、普通列車にしてほしいという意見が寄せられていたのを覚えています。超快速はともかく、無印の快速なんて快速運転する必要があるのか、みたいな通過駅の数でしたからね。
そういえば、各駅停車だけになると、ほくほく線内の無人駅の通過メロディーも定期列車では聞けなくなりますね。生で聞きたい方、記録したい方はお早めに。……もっとも、まつだいと虫川大杉は今年3月からすでに聞けなくなっていますが……。
えちごトキめき鉄道
公式プレス:
https://www.echigo-tokimeki.co.jp/userfiles/elfinder/information/20221216_dia_kaisei.pdf
○ 妙高はねうまライン
1.22 時台、新井~直江津間に各駅停車の下り列車を新規設定し、北陸新幹線及び日本海ひすいラインとの接続を向上します。
※これにより 18 時~22 時台の上越妙高駅における新幹線接続(高田・直江津方面)は、15 分程度となります。
2.一部上り列車の運転時刻を変更し、北陸新幹線との接続を向上します。
3. ご利用状況に合わせて、一部列車の運転を取り止めまたは運転区間を見直します。
1.22 時台、新井~直江津間に各駅停車の下り列車を新規設定し、北陸新幹線及び日本海ひすいラインとの接続を向上します。
2.一部上り列車の運転時刻を変更し、北陸新幹線との接続を向上します。
接続の改善と言えばそれで終わりなんですが、この「22 時台、新井~直江津間に各駅停車の下り列車を新規設定」がクセモノです、鉄オタ趣味的に。
なんじゃそりゃ!!
……あの社長のブログいわく、新潟から新井へ来た特急「しらゆき8号」*4が回送で直江津へ戻るスジを利用し、普通列車として客扱いをするようです。
こういう、「特急車両の回送を普通や快速にする」というのは珍しくないことで、かつて妙高はねうまラインがJR信越本線だった時代にも行われていたことなのですが、トキ鉄開業後は一度もなかっただけに新鮮です。しかもJRが所有するE653系で。つまり、人様から特急用に借りている車両を使って普通列車をやるということで……よくJRが許可したなぁ。
「新幹線との接続改善」は社長が以前からブログでたびたび言及しており、自己利益も大きい肝入り施策だっただけに頑張ったんでしょう。普通列車なのにわざわざ「特急編成」なんて書く必要ないですからね。
一方で、新幹線との接続を重視するあまり、上越妙高や糸魚川での長時間停車が増えたり、他の駅での在来線同士の接続が悪化するのではないか、という心配はあります。これに関しては、できあがった時刻表を見てみるまで分かりません。
3. ご利用状況に合わせて、一部列車の運転を取り止めまたは運転区間を見直します。
「※ダイヤ改正後より、越後湯沢~新井間・新井~越後湯沢間の直通運転は廃止となります。」と、この章で北越急行との直通運転廃止が明記されています。 トキ鉄線内を走るHK100形の姿を見られるのも残り3ヶ月となりました。
また、JRのように深夜時間帯の繰り上げはないものの、日中の妙高高原行きを新井止まりとしたり、夜間の上越妙高や二本木までの区間列車を廃止し、妙高高原始発の列車に統合するなどして本数を減らすようです。
正直、それよりも日本海ひすいラインの糸魚川~泊間の本数を減らしたほうがいい気もしますが……。おそらくあいの風とやま鉄道との絡みもあり、特にあいの風は来年4月から運賃値上げを予定していますから難しいのでしょう。なにせ、米騒動発祥の地ですからね、値上げしてさらに減便となると暴動が起きかねません(言い過ぎ)。手っ取り早くイジれるはねうまラインが、その割を食っているような気がしないでもない。
***
以上、来年3月のダイヤ改正の概要について、私が気になった項目だけを抜粋して見てきました。コロナ禍も3年が経ち、インバウンド解禁などで人の往来が戻りつつありますが、新幹線を擁するJRと3セクで明暗分かれた形です。
トキ鉄には「雪月花」もあり、先行きが心配された観光急行もクラウドファンディングが予想を超える反響となっていて、大都市圏からの誘客に余念がない一方、北越急行は次なるキラーコンテンツがありません。年々、地元密着のローカル線になってくれるのは嬉しいのですが、地域間輸送だけではやはり限界が見えています。
トンネルばかりで景色を売りにした観光列車も難しく、それを逆手に取った「ゆめぞら」も今となっては設備の老朽化、内容の陳腐化が否めません。「超低速スノータートル」や大地の芸術祭とのコラボなど、どうしてもイベントや臨時列車頼みになってしまう部分は悩ましいものの、一方で「コンマル」*5のように定期的に開催されて定着してきたイベントもあります。
「私が乗らなくても誰かが乗る」「鉄道があって当たり前」の時代は終わりを告げました。鉄道会社の自助努力だけでなく、今後も地域住民や行政が一緒になって企画し、あるいは参加し、「ほくほく線沿線ではいつも楽しいことがある」「ほくほく線に乗れば楽しいところへ行ける」という機運を醸成し続けていくことが重要だと思います。