鉄路は西から東から

鉄分多めの日常とお出かけの記録

“旅は自由席”――暖冬道東一周旅行(7)

rockmansion.hatenablog.jp

第6回はコチラ↑

 

旅行4日目 2020年1月30日(木)

「ボローツク」で札幌へ

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朝6時30分、北見駅。北海道旅行の最終日はここから始まります。昨日までと違い、この日は夜も明けきらぬ早朝からすでに雪模様。オホーツク海沿岸地域には、爆弾低気圧が接近し始めていました。

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やがて、白に染まる鉄路の向こうから、4つのライトをあかあかと照らし、網走仕立ての特急「オホーツク2号」が定刻通り到着。地域の名を背負い、網走から札幌まで5時間以上かけて直通する石北本線の看板列車です。

ただ、「地域の名を背負い」と書けば聞こえはいいですが、充当されているのは国鉄時代から活躍するキハ183系気動車。他の線区には、平成生まれの新型特急車両が軒並み走っているのを見ると、どうしても見劣りするのは否めません。実際、北海道の過酷な気候で30年以上酷使された車体は見るからにボロボロで、故障もたびたび発生しているとか。こうして鉄道マニアの付けたあだ名が「ボローツク」……。

わずか4両編成のうち、豪華なハイデッカーグリーン車が丸々1両連結されているのは良いのですが、自由席オンリー旅の私には関係ありません。4号車の自由席に乗車。車内はガラガラで、外国人観光客が一組と、その他に一人客がチラホラいる程度。座席も国鉄時代からの古いものでした*1。まあ、マニアの末席として、これはこれで嫌いではありません(笑)。

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ボロいボロいと言いつつも、列車は雪をかき分けながら快調に走り出しました。後ろへ吹っ飛んでいく雪景色を見ながら、駅までの道すがらにセコマで仕入れたおにぎりを朝食とします。次の停車駅である留辺蘂を発車すると、車窓は次第に山深くなり、列車の速度も見る見る低下。エンジンを唸らせながら、のったり、のったりという感じで山を登っていきます。

やがて「常紋」という看板が取り付けられたトンネルに突入。石北本線の難所の1つに設けられた「常紋トンネル」です。全長は507mと長くありませんが、凄惨極まりない「タコ部屋労働」で建設されたことで知られています。

そんな常紋トンネルを無事に抜け、列車は峠を下っていきます。安国では貨物列車とすれ違いました。あれが北見地域の特産品の玉ねぎを全国へ運ぶ「玉ねぎ列車」でしょう。

tenki.jp

車窓に家並みが増えてくると遠軽に停車。ここから進行方向が変わります。それまで最後部だった4号車が先頭となり、乗客もセルフで座席を回転させて札幌を目指します。車掌が巡回してきて、逆向きのままの空席を回したり、あるいは2人で4人掛けにして使っている乗客を注意したりしています。どうせ空いているんだからいいような気もしますが……。

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「白滝シリーズ」*2の生き残りである白滝を発車すると、列車は次の上川に向けて再び峠越えへ。白滝~上川駅間は37.3km、これは日本一長い駅間距離だそうで、石北本線最大の難所である北見峠が間にあります。相変わらず雪が降り続く中、速度はまた大幅に低下。大げさなエンジン音とともに雪を巻き上げながら進みます。トンネルに入るとホッと一息といった感じで、車体にこびり付いた雪が途端に溶け始め、雨だれのようになって窓いっぱいに流れていきます。

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長い長い一駅を走り抜けて上川へ停車。次の安足間でも運転停車があり、札幌から来た特急「オホーツク1号」と行き違いました。向こうもすでに2時間以上走り続けてきた列車ですが、険しい石北本線にまだ足を踏み入れたばかりです。

いつしか雪も降り止んだころ、車窓に家が増え始め、だんだん都会になってくると列車は高架を登ります。北見から3時間あまりで、ようやく旭川に到着。長旅を終えたような気分になりますが、終点の札幌まではまだ1時間半もかかります。ここで降りる乗客も多いものの、その倍近くも乗車があり、自由席も大半が埋まりました。なるほど、これでは必要以上に座席を占有するなと車掌も注意に来るわけですな。

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短い休憩とも言える3分停車ののち、「オホーツク2号」は再び走り出しました。ここからは函館本線。複線電化された線形のいい線路を、自身が特急であることを思い出したかのように走って行きます。

列車は石狩平野の中を快調に飛ばし、深川、滝川、岩見沢と、私にとって見慣れた名前の駅に停まりますが、そのたびに乗客がドドッと乗ってきます。旭川~札幌間は特急「ライラック」が毎時1~2本あり、「オホーツク2号」のわずか十数分後にも「ライラック16号」が追いかけてくるダイヤになっていますが、なぜこの道産子たちは自由席も多く快適な新型電車特急ではなく、4両(自由席は1両半)しか繋いでいないオンボロ気動車を目掛けて大挙として乗ってくるのでしょうか。

ずっと空席だった私の隣にもオバチャンが乗車し、満席となった特急「オホーツク2号」は、北見からおよそ4時間半の長旅を終えて終点の札幌駅に到着。

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近年では故障も多いというキハ183系ですが、この日は実にご機嫌で、古豪の走りをたっぷりと堪能させてもらいました。

時刻はちょうどお昼時。北海道で食べる最後の食事ということもあり、駅ビル「エスタ」の中にある回転寿司店へ。旅行で札幌へ来ると、いつもここに立ち寄ってしまいます。

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写真中央はニシン。左上は失念してしまった

せっかくなので、内地の回転寿司では馴染みの薄いネタを中心に食べました。特に私が好きなのは(写っていませんが)「生ホッキ貝」です。よくある紅白の蒸したやつじゃなく、ここは「生」。おすすめですよ。

 

つづく

 

 

*1:あとで知ったが一部指定席の3号車は座席がリニューアルされていた。だから3号車から席が埋まるようだ

*2:白滝シリーズとは (シラタキシリーズとは) [単語記事] - ニコニコ大百科